英語読書をおすすめしたい6つの理由


 私は、配偶者の仕事の都合で15年以上アメリカに住んでいます。
 しかし、その長い期間の大半は英語を使う機会は実はあまりありませんでした。海外に住む日本人主婦にありがちなコミュニティから孤立した生活で、子供の日本語能力維持のために、家庭内は完全日本語環境。日本語のテレビ(幼児番組ばかり)に日本語の本、日本語の音楽、会話はもちろん日本語・・・日本で英語を勉強している人たちの方が、よほど英語に触れる機会が多いのではないか、と常々思ったものです。
 そんなわけで、私の英語力は悲惨なレベルを低迷したままでした。長きに渡る海外生活で身に着いたのは、「わかりません、教えて下さい」と丁重かつ堂々と教えを乞う開き直りと度胸のようなものだけ。お恥ずかしい話ですが、頼る人もいない海外生活は楽しかったのは最初だけで正直言って過酷で、本当に生きているだけでせいいっぱいでした。
 そこで、「これではいかん」と、うだつの上がらない現状を打破すべく、せめて読書だけでも英語にしようと3年くらい前に一念発起して英語の読書を始めました。会話は相手がいないとできませんが、読書は一人でできるからまずはそこからやってみようと決意したわけです。
 もうそれからは毎日がバラ色で順風満帆、若返ってモッテモテ!! 
 ・・・・・・なわけはありません。今も試行錯誤の日々が続き、「日本語と同じように楽々読める」という状態とはほど遠いです。
 こんなレベルですが、それでも、
「とにかく英語で本を読んでみよう、読めるようになるまで頑張ってみよう」
と一歩踏み出したのは人生最良の選択のひとつだったと思っています。

 英語読書のどこがそんなにいいのか? どんな効果があるのか?

 これからやってみたいな、と思っている方々の背中を押すべく、私が実際に英語の読書をしてみて、自分の人生にどんなメリットがあって、これからも続けていきたいと思っているのかをまとめてみました。
 
(英語力が上がる!みたいなのは当たり前なので省略しておきます)

1.自分の成長・向上を楽しめる

 人間というのは生きている限り、「幸福になりたい、より良い自分になりたい」という向上心を気付かずに内面に抱えている生き物だと思います。「不幸/不健康になって苦しみたい」という、生物の生存本能に反している傾向を持つ人はめったにいないでしょう。
 しかし、多くの人が向上心を持っているものの、大人になると若い頃には無かった煩雑な悩みも増え、家庭や仕事など背負う責任も大きくなり、日々を生きるのが大変で自身の「向上」などほったらかしです。かつ、身体や脳の働きが無自覚に弱ってくるのもその傾向に拍車をかけてしまいます。結果、向上心を行動に変えることは、どんどん難しくなっていきます
 概して大人になると、子供の頃のように、
「○○がわかるようになった!嬉しい!」
「今までできなかった○○○ができるようになった!やった!!」
というような達成感や幸福感が感じられる機会が減っていきます。そして、そういう成功体験が減ることにより、ますます自分が本来持っていたはずの向上心を忘れてしまう・・・。負のスパイラルに陥ってなんだか退化しているような自分に停滞感を感じるようになっていませんか? 私だけですかね?

 「これは、お経か?黒魔術の呪文か?暗号か?」状態だった外国語の本を読めるようになる、それは初めて自転車に乗れるようになったり、泳げるようになったりした時と似ている、大人になるとなかなか味わえない非常に単純な喜びです。また、それに至る過程も、たとえなかなか思うように進まないとしても、「目標に向かって良い方向に向かっている」という気持ちよさは少なくともあるはずです。

 英語読書じゃなくても、自己の成長や向上を感じられる活動や学びはあるとは思います。しかし、英語はだれもが義務教育の期間に無理やり勉強させられて、基礎はもうできているわけで、英語読書は「ゼロからのスタート」ではないのです。高価な機器や道具を買う必要も無いし、ひとりでいつでも手軽に始められるので、「最近の自分は成長が無い、何か始めたい」と思っている方に特におすすめです。

2・世界が広がる、閉塞感を打破できる

 大人になってある年齢を過ぎると、家庭環境だったり仕事の都合だったり、経済的な理由だったりで、海外に旅に行くなんて無理無理・・・となるはずです。海外どころか国内だって、好きにぷらぷらできる時間的経済的余裕は歳を重ねるほど減ってくるかもしれません。面倒をみたりしなくてはいけない家族がいたり、健康上の問題で遠出を諦めざるを得ない方もいるでしょう。あるいは、もう「遠くに行ってリフレッシュしたい」という欲求もあまり湧かず、「その分を貯金しよう」となるかもしれません。一緒に行きたい友達や家族もいないかも。(悲しい事ですが、大人になると友達は減ることが多く、新規に作るもの難しくなりますね)
 つまり、圧倒的に行動範囲は狭まっていきます。住み慣れた土地で、行き慣れた場所を訪れるのを繰り返す毎日、そういう生活にうまく幸せを感じられないタイプだと日々が辛くなります。
 そういう閉塞感を弱めてくれるのが外国語の読書だと思います。訪れることがかなわない遠い土地があり、そこ住む人がその土地の言葉で書き、その土地の人たちも読んでいるであろう本をそのまま理解して楽しむ、というのは、自分が遠い世界と繋がっているような感覚をもたらしてくれます。もしかしたら、一冊も英語の読書をしたことがないのに、お金と時間だけあってガイドブックだけ読んで英語圏に遊びに行った人より、あなたはその土地を「経験」できているかもしれません。旅行したり留学したりして見聞を広めるだけが世界を広げる方法ではないと思います。
 実際、アメリカに中途半端に住んでいる私のような日本人より、住んだことはないけれどよく勉強している(つまり読んでいる)日本のジャーナリストの方のほうがアメリカを確実によくわかっている、と感じたことがあります。ジャーナリストは取材や資料、書籍から知識を組み立てるプロとは言え、住んだこともないのにあのレベルで現地を理解・把握できるるなんて・・・と打ちのめされた気持ちになりました。
 世界を知るために、何もかも捨てて移住したり、大金をかけて訪れたりしなくてもいいのかもしれません。その前に、原書を読みあさってみませんか? それを通して知った知識を実体験したり、より深く知るためにその地を訪れてみる、その順序のほうが楽しいはずです。
 別に翻訳された海外の本を読めばいいじゃないかと言われそうですが、おっしゃる通りです。それでもじゅうぶんに世界は広がるはずです。まずはそこからなのかもしれません。しかし、翻訳本をたくさん読んで楽しいと思った方には、次に原書での読書に進まれることをやはりおすすめしたいです。
 日本語に翻訳される本はかなり限られており、「なぜこれが翻訳されているのに、こちらは翻訳されていないのか?」という感じで、同じ作家や同じジャンルでも翻訳出版に至った選択に首をかしげるケースも多く感じます。何か翻訳出版のビジネス上の理由があるのか、かなりのベストセラーなのに日本語版が出ていない本もあります。よくわからない基準で、まずは出版社に選択を狭められているわけです。
 そして翻訳本には特有の読みづらさがある、という問題も少なからずあります。日本の文芸翻訳者さんは人気職業で、大勢の志望者から優秀な方が選ばれて生き残っているわけですから、読みやすい翻訳が大半ですが、中には内容よりも読みにくさが印象として残ってしまう翻訳本もあります。昔に翻訳されたのみで新訳版が出ず、日本語が古めかしくて読みづらいものも。
 原書で、つまり英語で読むことで、確実に、その本が書かれた「遠いどこか」をより近くに生々しく感じられるようになるはずです。本を通して今いる場所から解放されるような自由をひと時でも感じられたら、日常の閉塞感を乗り越える大きな助けになるはずです。時空を超えるような感覚を楽しみましょう。

3・脳の健康に効果的

 これは、英語読書というよりすべての読書にも通じることであり、「本を読むことは、認知能力の維持に効果がある」という医学的な研究結果がいくつも発表されています。「運動と読書は脳みそに悪い」「脳の退化・老化防止に役立たない」、という研究結果を私は聞いたことがありません。どちらも過度にやるのは良くない、というのは聞きますが。
 例えば、ABC Newsのこの記事やそこで解説されている研究結果によると、読書やチェスなどのボードゲーム、すなわち脳に適度な負荷がかかる活動を習慣的に行っている人のグループは、そうした活動に興味が無い人々のグループに比べて2.5倍以上もアルツハイマー病をはじめとする認知症になる率が低かったとのことです。「アルツハイマー病者のグループは、中年期(40-60歳)に知的活動の量を減らしてしまった人が多かった」というこの研究結果も。ほかにも、読書が認知機能の維持に効果があることをサポートする研究結果は次々に出ています。
 なぜ読書が脳にいいのか? 人間の活動を、ActivityとPassivityの二つに分けて考えてみます。
Activity (積極的、能動的な活動。努力・労力が必要な活動)
Passivity (受動的、受け身な活動。自分の労力を要さず外部が楽しませてくれる活動) 

 文字を読み内容を理解して楽しまなくてはならない読書は、何もせずにぼんやりしていても私たちを楽しませてくれるテレビ視聴などに比べて、完全に「Activity」サイドに位置するわけです。前述の研究にはPassibityばかりの生活、つまり毎日ぼんやり長時間テレビを眺めているようなライフスタイルは認知機能の維持に役立たないばかりか、認知症のリスクにすらなると指摘されています。当たり前のことかもしれませんが、やはり頭は使わないと悪くなるわけです。それが研究結果として数値にも表れてしまっています。そして、楽しく頭を使う活動の代表が「読書」というわけです。
 読書も内容によっては、「Passivity」と言ってもいいくらい頭を使わず楽に読めるものもあります。しかし、英語読書はまさに「Activity」です。母語の読書よりももちろん労力を要します。だからこそ早くに始め、続けることで脳には好影響があるはずです。
 そして、読書のメンタル・ヘルスへの効果も見逃せません。毎日たった6分の読書でもストレスのレベルがぐんと下がるという研究結果や、読書が不安や鬱状態からの回復の助けになるという研究結果もあります。脳や心にいいことづくめ。日本語読書からでもすぐに始めましょう。そして、ガンガン読んでいるうちに脳がもっと難しいことに挑戦したがっているのを感じたら、是非英語読書に挑んでみましょう!!!

4・和書の読書がより楽しくなる

 英語読書にはまった人の中に、よく「日本語の本はまったく読まない」という人がいて、気持ちはわからないでもないのですが、もったいないなと思います。
 確かに英語で本を読むのは時間を要します。特に、始めたばかりの頃の「読んでも読んでも進まない」という時期は、忙しい日常から読書のために捻出した時間のすべてを英語読書に費やしたくなることと思います。
 しかし、英語読書をある程度経験したら、是非是非日本語の本に戻る時間も作っていただきたいです。それはもう感動体験ですよ。なんというか「砂漠に水をまくような毎日に、いきなりスコールで大雨が来た!!!」というような感じです。日本語の本の言葉のすべてが乾ききった大地に浸みこんでいくように頭に入ってきます。知らないうちに集中力や理解力が上がっているのか、英語読書のもどかしさから日本語読書の体感スピードが上がっただけなのか、どちらか定かではありませんが、とにかく以前とは読書の楽しさがまったく違って感じるはずです。速読か何かをマスターしたような不思議な感覚を感じます。たとえ錯覚であっても、是非あの感じを味わっていただきたいです。
 あとやはり母語は大切です。英語の本と日本語の本、両方を読むことで両方を理解する能力が研ぎ澄まされるのではないでしょうか。英語一辺倒は一定期間は良いのかもしれませんが、本末転倒・・・というか何か極端すぎる感じもします。何冊かに一冊を和書にしたり、30分の読書時間のうち、最後の10分は和書にする、とかバランスがとれた読書が理想だと思います。

5・本のセレクションが無限

 英語は、残念ながら「世界の標準語」と化しています。なんで日本語が標準語じゃないんだよ、と腹立たしい限りですが、これはどう考えても、しばらく、というかおそらく我々が生きている間は変わることはないでしょう。
 英語話者の数と日本語話者の数が、2022年の時点でどれだけ違うかと言うと・・・。

英語:約14億5千200万人
日本語:約1億2千500万人  
(ソース:WikipediaさんがEthnologueを基にして作成したこちらのページ) 
 
 英語話者は日本語の約10倍。ということは、英語を書く人と読む人も日本語とは比較にならないくらい存在するということで、英語の書籍のマーケットの規模が桁違いに大きいというのがわかりますよね。英語の本のマーケットは「世界」を相手にしているわけで、それだけ出版数も多く、書き手のすそ野も広大というわけです。世界中から才能ある書き手が次から次へと出てくる英語の本の選択肢は無限です。(日本も少数精鋭で世界に誇る書籍の質の高さだと思いますが) 書籍化されていないことなど無いのではないか、というくらいありとあらゆる情報や物語が手に入ります。
 無限ゆえにどこから手をつけていいのかわからないもどかしさもあり、市場の膨大さに圧倒されてしまいますが、それは最初だけで、次読む本が探さなくても向こうから歩いてきてくれるかのような状態にすぐになると思います。読んでも読んでも読み切れないほど、読みたい本が必ず出てきます。

6・ぐっすり眠れる

 はっきり言います。私は、英語の本以上に効果のある入眠剤を知りません。
 なんなんですかね、あのありえない眠気は? 夜、横になって読んでいると、たった数ページ、時間にすると5分~10分以内で、どこかで一服盛られたのだろうかと思うほど簡単に意識が無くなります。どうやったら起きていられるんですか? 不思議過ぎます。英語読書で、睡眠薬とかサプリメントなどのケミカルに頼らず、自然で快適な入眠が実現できますよ!!

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 ここまで熱烈にすすめておきながら寝てばかりで読んでないんかい!と怒られそうですが、ええ、その通りです・・・。こんな私が言っても説得力皆無ですが、英語での読書、ほかの皆さんにもきっと「やってみてよかった」と思える何かがあるとそれでも頑なに信じてます。
 騙されたと思って、さああなたも是非一緒やってみましょう! そして、よく寝ましょう!

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