ロマンス小説 VS ラブ・ストーリー ニコラス・スパークスがその違いを語る

  2月ですね。2月と言えば・・・アレがやってきます。そう、節分!!・・・ではなくバレンタイン・デーが・・・。日本とはかなりやり方は違うものの、アメリカのバレンタインの過熱ぶりはやはりすごい。とても大切な日なようで、図書館や書店でもこの季節にちなんでラブ・ストーリーやロマンス小説のコーナーが作られているのを見かけます。

 そんなコーナーに並ぶ常連作家と言えば、アメリカでは、アメリカが誇る(?)ラブな小説家、ニコラス・スパークスです。
 
 誰それ?という方でも、『メッセージ・イン・ア・ボトル』『きみに読む物語』『ウォーク・トゥ・リメンバー』『親愛なるきみへ』『ラスト・ソング』『ロンゲスト・ライド』・・・などの映画名は、耳にしたり聞いたりしたことがあるのでは。そうです、すべてニコラス・スパークスが原作です。出した小説の半分くらいがメジャースタジオでハリウッドのAリストセレブ出演陣で映画化され、本からも映画からもガッポガッポの羨ましい大ベストセラー作家です。
ニコラス・スパークス原作の映画3本 観る前からストーリーがわかりそうなパッケージ

 上記に列挙した映画は、雨の中で「待ってくれぇ~」と男性が女性を追いかけてずぶぬれでキッスしたり、彼女をいじめた不良を彼がかっこよく殴ったり、愛し合う男女が引き裂かれたり、まあすべてシリアスな恋愛映画です。彼女のためにいやいや一緒に観ている男性も多いんじゃないかと予想し、私は勝手に「デート・ムービー」と呼んでいます。
 そんな、女性向けの胸キュン(死語!ごめんなさい)小説を連発しているニコラス・スパークスさんがインタビューでこう言っていたのに遭遇したことがあります。

「私が書いているのはラブ・ストーリーだ。ロマンス小説と言われたくない。」

 えっ・・・・・・違うの? 
 ニコラス・スパークス、まさかの「一緒にすんなよ」発言! 
 そのジャンルをあまり読まない私には、違いがよくわからない。強いて私が違いを感じられるところと言えば、それはずばり表紙の男!!表紙にやたら衣服をはだけた(もしくは半裸)の「あんた誰よ、この本はあんたの伝記かなんかなわけ?」という感じの男が載っていたらそれはロマンス・ノベルと見なします。その男に女がだっこされたりいちゃいちゃくっついていたらより決定的で、瞬時に内容が想像できるので、私のチョイスから外れます。
 ↓これ、読書SNS「goodread」の「2020年2月待望のロマンス小説リスト(February 2020 Most-Anticipated Romances)」というやつなんですけど、どれも表紙の男性が寒そうなカッコしてるでしょう。
揃いも揃ってなぜに脱ぐ、ロマンス小説の表紙の男性たち

 なんか全員ぼこぼこムキムキしていて「個性」の二文字が恋しくなる。アメリカの女性は、みんなこういう男性にうっとりなのか? ちょっとステレオタイプ過ぎやしませんか。女性が男性に惹かれるのは、もうちょっと複雑な理由があるような気がするんですけど。「マッチョでイケメンならいいんだろ、こういうのが好きなんだろ?」って感じでなんか世の女をバカにしてるような気が・・・。仕事のユニフォーム着ている人にグッと来ちゃう、とかいう女性もいるでしょうが。

 でも、ある意味すがすがしいまでに分かりやすい表紙です。メアリ・H・クラークさんの小説並みに、購入前にどんな本が分かるようにしてくれて親切と言えば親切か。このムキムキ男性が平凡なヒロイン(もしくはすごく不遇に耐えているヒロイン)をなぜか選んで熱烈に愛してくれるというストーリーです!というのが読まずとも伝わります。

 ちなみにニコラス・スパークスは、確かに表紙でも「俺は違う!」感を出しています。ほら↓
「私はニコラス・スパークス!軟派なロマンス小説じゃなくて美しい愛の物語を書いてるんだ!」という表紙

 ロマンスとラブストーリー、ちゃんとした定義や違いはあるんだろうかと思ってネットを検索したところ、当のニコラス・スパークス本人がご自身のホームページのFAQの一番最初の質問でそれを選んでいましたよ。相当、違いにこだわっていらっしゃるようで・・・。さすが作家、なかなか興味深い回答です。以下、引用です。

 What is the difference between a love story and a romance novel?
ラブストーリーとロマンス小説の違いってなんですか?
 
 It’s equivalent to the difference between a "legal thriller" and a "techno-thriller."
(「リーガル・スリラー」と「テクノ・スリラー」の違いと同じです。)
 
In that instance, both novels include many of the same elements: suspense, good and bad forces pitted against each other, scenes that build to a major plot point, etc.
(その例で言うと、両者には、サスペンス、善悪のせめぎ合い、シーンがプロット・ポイントで構成されている、と言った同じ要素があります。)
 
But aside from the obvious, those novels are in different sub-genres and the sub-genres have different requirements.
(しかし、そういった明らかに似ている点を除くと、両者は異なるサブ・ジャンルに属し、そのサブ・ジャンルに属するには異なる必要条件があります。)
 
For instance, legal thrillers generally have a court room scene on center stage, techno-thrillers use the world or a city as their setting.
(例えば、リーガル・スリラーは一般的には法定シーンが見せ場だし、テクノ・スリラーは舞台としてその小説の世界や都市を扱っています。)
 
Legal thrillers explore the nuances of law, techno-thrillers explore the nuances of scientific or military conflict.
(リーガル・スリラーは法のあいまいさを追求し、テクノ・スリラーは科学に関する確執や軍事的な対立の微妙さを追求しています。※「Nuance」がうまく訳せません)
 
The same situation applies with romance novels and love stories. Though both have romantic elements, the sub-genres have different requirements.
(同じ状況がロマンス小説とラブストーリーにも当てはまります。両方ともロマンティックな要素はありますが、サブジャンルの要件が異なります。)
 
Love stories must use universal characters and settings. Romance novels are not bound by this requirement and characters can be rich, famous, or people who lived centuries ago, and the settings can be exotic.
(ラブストーリーは普遍的な登場人物や設定を使わなくてはならない。ロマンス小説はこういった要件にとらわれず、登場人物は金持ちでもいいし、有名人でもいいし、何世紀も前に生きた人物でもいいし、エキゾチックな舞台でもいいわけです。)
 
Love stories can differ in theme, romance novels have a general theme—"the taming of a man."
(ラブストーリーはテーマが様々でもいいのですが、ロマンス小説はひとつの一般的なテーマがあります。「男性を思い通りにすること(the taming of a man)」です。)
 
And finally, romance novels usually have happy endings while love stories are not bound by this requirement. Love stories usually end tragically or, at best, on a bittersweet note.
(そして最終的にロマンス小説は普通はハッピーエンドなのに対し、ラブストーリーはその要件にはとらわれません。ラブストーリーはたいてい悲劇的に終わるか、良くてもほろ苦い感じで終わります。)


 簡単に言うと、ロマンス小説は「男が女の魅力に完全に屈服し、女がハッピーになるように終わっていればいい小説」ということでしょうか。ラブストーリーも恋愛は扱うけれど、終わり方はさまざま、そこが違う・・・ということかな。

 フィクションの世界の中でだけでも、たくましい男性に姫のように扱われたい、お約束のハッピーさを楽しみたい、というのであればロマンス小説。ちょっと切ない感じを味わいたいな、ということであればラブ・ストーリー。

 こんな感じで気分で使い分けて楽しくラブな読書を。

 ちなみに、ニコラス・スパークスの小説ですが、(2022年現在)長編23作のうち、約半分が日本で翻訳出版されています。2010年の『Safe Haven(セイフ ヘイヴン)』くらいまではほぼすべて翻訳されているのに、ここ10年は2018年の『Every Breath(きみと息をするたびに)』だけ・・・というのが少しさみしいですね。

 ご本人も上記のFAQへの回答で「ラブ・ストーリーは普遍的な人物や設定を使うものだ」とおっしゃっている通り、普通の人たちが普通の暮らしの中で愛に葛藤するようなストーリーが多いので、原書の英語も比較的平易で読みやすく、洋書読書を始めて間もない方にもおすすめです。

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